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戦場に響く鈴の音
第24章 演奏
「おい、鈴…。」
馬を馬屋に預けた瞬間から鈴が俺の手を引いて
「こっちだ。」
と言うなり勝手に歩き出す。
別に、何処に行こうと構わないが鈴が向かおうとしてる先は余り治安が良いとは言えない。
「何処に行きたいのか言えよ。」
「説明は出来ぬ。」
その一点張りで鈴はどんどんと歩いてく。
「旦那…、まさか…、嬢ちゃんとおかしなプレイでもするつもりですか?」
俺の後ろからついて来る茂吉が冷やかすように言う。
「するかよ…。」
茂吉が変な事を言う理由はわかってる。
鈴が向かってる先は花街の裏通り…。
このまま花街へ入れば、俺は女連れで遊郭の遊女を買う変態趣味の領主だと噂になるのは間違いない。
「この辺りで…。」
立ち止まる鈴が辺りを見渡す。
「だから、何を探してんだよ?」
店を言えば、茂吉が探して案内をしてくれるというのに、鈴は1人で探そうとする。
「ほら、神路っ!聴こえるか?」
突然、鈴が瞳を輝かせて俺を見る。
聴こえる…。
耳を澄ませば、微かに音色が聴こえて来る。
鈴が言っていた琴の音だ。
「あれは、何処で鳴ってるのだ?」
俺の着物を掴み背伸びをして俺の顔を覗き込む。
「多分、花街の外れだな。遊女から堕ちる女が芸妓になる為に練習してる音だと思う。」
聴こえて来る音色はまだ拙い演奏で、客前で披露が出来るレベルだとは思えない。
その程度の音色でも鈴は必死に音が鳴る方へと耳を傾ける。
「茂吉…。」
「はいな。」
「今夜の宿は芸妓を入れる事は出来るか?」
「そりゃ、ご領主様の望みとあればなんなりと…。琴の演奏が出来る芸妓を数人呼べば宜しいですか?」
「ああ、頼む。」
そんなにしてまで鈴が聴きたいと言うならば、目の前で演奏させた方が早いと思う。