この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦場に響く鈴の音
第25章 家族
なんで俺の周りの女子とは、こうなのだ…。
俺の屋敷のはずなのに…。
女子共は好き勝手な事ばかりを言う。
俺の横に寄り添う多栄を見下ろせば
「鈴様の警護はどうしましょう?」
と従順な多栄が聞いて来る。
女子とはいえ、多栄は武士…。
しかも、堅物な寺嶋の娘だ。
こんな時だけ、多栄が可愛く見える。
「放っておけ…、絖花が付いてる。琴の練習なんぞ聴いてても多栄には退屈なだけだろ?」
多栄の頭を撫でれば
「黒崎様…、警護に退屈などございませぬ。いつ如何なる時も気を抜く事は武士にとっては命取りになりますぞ。」
と多栄にまで説教を喰らう。
「いや…、気を抜いてる訳では…。」
「常に鍛錬あるのみです。」
鼻息を荒くする多栄もやはり女子だとため息が出る。
仕方がないからと多栄を連れ道場に向かう事にする。
「水野っ!寺嶋っ!」
この屋敷内で兵士を持つ者を呼び付ける。
直ぐに、廊下を抜ける俺の前へと二人が姿を現す。
「茂吉…、例の奴らを道場に…、それから寺嶋…。」
そう声を掛ければ寺嶋が一歩前へと進み出る。
「今の警備兵の状況を報告しろ。」
俺の質問に寺嶋が頷く。
「雪が始まり、半数を待機にさせざるを得なく…。」
と寺嶋が渋い物でも食ったような顔をする。
屋敷内警護は可能だが、外側で雪が降れば見回りをする程度でしか兵士達の配置が出来ない。
「手隙になる者を10人づつ道場へ回せ。今から鍛錬に入る。」
「黒崎様…、自らの稽古でありますか?」
前回、何人か怪我をさせた事で寺嶋が俺に警戒する。
「いや…、寺嶋の兵に水野の兵士の面倒を見させたいだけだ。」
寺嶋の兵は全て天音の訓練所上がり…。
刀の振るい方すら知らぬ茂吉の兵士達とは格が違う。