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戦場に響く鈴の音
第26章 軍議
離宮へ渡れば、見知らぬ女達が俺の姿を見るなり跪く。
「新しい女中か?」
雪南に問えば
「風真が用意した女中です。あれらは天音で雇った者達でなく風真が西元から呼び寄せた女中達…。」
と冷たい答えが返って来る。
「わざわざ…、西元からだと?」
「風真の懐でやってる事にまで、口出しは出来ませぬ。最も、館主である黒崎様が出て行けと言えば話は変わって来ますが…。」
彩里が由から連れて来た女官は2人…。
それらは下働きの女中でなく、姫である彩里の身の回りの世話をする女官という者達であり、屋敷内を掃除したり、薪などを運んだりする仕事まではしない。
常に彩里に寄り添う老婆は乳母であり、彩里の教育や相談役などを務める者だ。
女中が居なければ、確かに不便ではあるが、最低限の事は主屋の女中が交代で離宮の仕事を務めて来た。
なのに直愛が彩里専用の女中をわざわざ離宮に入れた事で、おかしな噂が尽きないと雪南は表情を険しくする。
「まあ、ひとまずは、あの馬鹿女と会ってからの話だ。」
いつも通りに彩里の部屋の前まで行けば
「おかえりなさいませ…。」
と正座で両手を床に付く彩里がしおらしく俺を迎え入れる。
「留守中に…、離宮が変わったようだな。」
主の居ない屋敷で好き勝手をするなと嫌味を言ったところで
「神路様のご命令で、家臣である風真様が何かと気遣いをして下さいましたの。」
と彩里は開き直る。
「それよりも神路様…、ご朝食は如何なさいますか?」
話をすり替える彩里が聞いて来る。
「俺は済ませて来た。離宮にはお前らの分しか無いだろ?」
俺の質問に彩里が魔女のようにニタリと口角を上げる。