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戦場に響く鈴の音
第26章 軍議
「鈴が欲しくば、おっ父に挨拶を済ませてからだ。長引けば長引くほど時間を失うだけだ。」
自分の価値を知る人間の言葉を鈴が口吟む。
これが直愛と鈴との違い。
舌なめずりをして俺の耳元に暖かな息を吹き掛ける。
「おっ父が待ってる。」
そう囁き、鈴が俺の膝から飛び降りる。
鈴が欲しくば急げと急かされる。
「お前のそういうところを愛してるよ。」
諦めた俺は部屋を出て義父の部屋へ向かう。
ふふふと小さく笑う仔猫が満足する。
「神路か?」
部屋に現れた俺を義父がゆっくりと眺める。
「ご挨拶に…。」
義父の前へ跪く。
「羽多野を連れて行くか…。」
義父は羽多野の心配もしている。
「あれは守護を絶対とする者ですから…。」
羽多野は鉄壁の名を持つ。
戦場での防御を崩した事が無い。
それ故に義父は俺を護れと羽多野に命じた。
その羽多野を連れて行くならばと義父もある程度は納得をしてくれている。
「私は燕へ戻る。」
そう言って義父が笑う。
「義父には須賀を連れて行って頂きたい。」
「大丈夫だ。わかってる。」
燕へ義父が帰る。
黒炎で俺の行動が批判を受ければ、義父がそれを足止めし、須賀が俺に伝える手筈になる。
大河様は俺を支持してくれるだろう。
しかし、宇喜多が黙ってるとは思わない。
「義父には苦労ばかりさせます。」
俺が頭を下げれば
「それが息子という者の役目だ。羽多野も蒲江も息子には苦労すると誰もが嘆いてる。」
羽多野は佐京に…。
蒲江は雪南に…。
思い通りにならない息子を嘆く父親達が愚痴を言ってるらしい。
それでも義父は俺の背中を守り、前へ進めと押してくれる。
俺もいつかは、そんな父親になりたいと思った。