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戦場に響く鈴の音
第3章 羽織
まだまだ鈴に信用が無いなと笑うしかない。
そうこうするうちに女中は俺が持って来いと言い付けた手縫いと櫛を持って戻って来る。
「鈴、その汚れた羽織を女中に渡して手縫いと櫛を貰って来い。」
鈴が唇を噛み悔しげに顔を歪める。
綺麗な顔の鈴がそうやって拗ねても可愛らしいにしか見えないのが不思議だと思う。
「鈴…。」
もう一度、畳み掛ければ鈴は俺の膝から降りて渋々ながら女中に羽織を渡す。
「洗濯の後で肴(さかな)とお酒のお代わりをお持ち致します。」
自分の言い分が通った女中はそう言うと鈴に向かって勝ち誇った顔を見せて立ち去った。
ここからは俺が鈴と戦闘する。
「やだっ!痛いっ!」
「やかましいっ!髪とは櫛で解いて水を手縫いで取らねば風邪を引く。」
鈴は俺を蹴飛ばし俺から逃げようとするが俺は無理矢理に鈴を抱えて鈴の髪に櫛を通す。
鈴の髪は真っ直ぐだが中が縺れて毛玉になってるところがかなりある。
「いーやーっ!」
鈴がジタバタを繰り返し、髪に櫛が通らない。
慌てた直愛が俺の膝元に寄って来る。
「神路殿…、櫛を貸して下さい。無理に髪を櫛で引っ張れば痛いだけになります。」
直愛が慣れた手つきで鈴の髪の裾からゆっくりと毛玉を解し髪を梳いていく。
「上手いな。直愛…。」
「うちには妹が居ますから…。」
直愛に髪を梳かれる鈴は直愛から顔を背け、さっきまで逃げようとしてたはずの俺にしがみつく。
「ほら、出来たよ。」
鈴の髪が綺麗に乾き縺れも無くなり、スッキリと落ち着いて収まってる。
「後は組紐でちゃんと一つに束ねておけば縺れる事が無くなる。」
不器用ながら俺が鈴の髪を束ねてやる。
伸び切った髪で隠れてた鈴の顔立ちがはっきりとすると直愛が目を見開いて吐息を吐く。