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戦場に響く鈴の音
第27章 道中
「鈴…、起きろ…。」
眠そうな鈴を地面へ下ろす。
「んん…?」
怪訝な表情をする鈴が目を擦る。
「囲まれている。」
油断したなと後悔する。
野盗の類いかと暗闇に向かって目を凝らす。
神経を集中させる。
一つ…、二つ…。
相手の息遣いを頼りにして人数を確かめる。
7~8人というところか?
窼が近いのか?
遠巻きに俺と鈴を観察している奴らを、逆に観察する。
「黒崎様っ!」
俺を探す兵達の声がする。
取り囲んで居た連中が暗闇の中へ溶けて消える。
「神路…。」
鈴が怯えて俺にしがみつく。
「気配は消えた…。」
そう伝えれば鈴が倒れそうになるから、身体を支えてやる。
「村の人か?」
「いや、この冬が越せなかった者達だろう。多分、まだ若い子供達ばかりだ。両親を失ったか、冬越えをする為に両親に捨てられてしまったか…。」
「野盗に堕ちた子供なのか?」
「堕としはせぬ…。」
「だが、神路…。」
それは危険だと鈴が不安がる。
「黒崎様…。」
いつもの冷たく不機嫌な声がした瞬間、鈴の身体が宙を舞う。
「おっと…。」
その身体を受け止めれば雪南が俺の側へ駆け寄る。
「鈴に何が?」
俺が抱え直す鈴を雪南が覗き込む。
「気を失っただけだ。」
そう説明すれば雪南が鈴の手首で脈を確認する。
「気を失わすほど、このような場所で何を?」
俺を疑い責める口調にため息が出る。
「多分、野盗の類いだ。」
「なら、警護の強化を…。」
「必要無い。まだ襲える段階だとは思えない。」
「盗みは出来ても…、つまり子供だけだと?」
「恨みは感じても殺気を感じなかった。」
俺の経験を信用する雪南が考え込む。
「捜索を…出しますか?」
「明日の朝に俺が出る。」
「そう言われると思いました。」
頭が痛いと雪南が嘆く。
鈴との約束だ。
鈴の様な子を増やさないと決めた以上、俺自身がやるべき事だとお人好しな自分自身に笑っていた。