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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
朧の籠城から7日目の夜が来た。
朧の周りには佐京が面白がって倒した兵の屍が積み上がる。
屍を回収しようとする由の兵まで容赦なく斬り殺す佐京のせいで朧周辺では異様な匂いが漂い、城そのものが異形な姿へとおかしな変貌を始めている。
「約束の7日目だ。」
軍議の席で佐京だけが嬉々として言う。
「約束は既に違えてるではないか?」
朧周辺に散らかる死体の文句を雪南が言い返す。
「籠城戦をやってんだろ?倒せる敵は僅かでも削って消費をしておくのが定石だ。」
「その兵が消費する糧を枯渇させるのが籠城戦の定石です。兵が減れば糧に余裕が出るだけだ。」
「話をすり替えんなよ。そもそもお前の予測が外れたから、こちらは無駄な糧と時間を浪費してんだろ?」
「無駄ではない…。」
雪南の言葉は既に説得力を失くしており、茂吉や他の兵も俯くだけとなる。
「それで、佐京なら朧を落とす自信があるのか?」
総大将として、最悪の手段だとわかってても佐京のやり方で朧攻めをすると認めざるを得ない。
「へー…、坊っちゃんまでもが腹心の蒲江の言葉を支持してやらないのか?」
佐京の嫌味に付き合ってる暇はない。
「雪南の判断は信じている。だが、時間が無いのは事実…、この状況を打開する手立てを考えるのが俺の役目。それだけの大口を叩いておきながら今更、朧は落とせないとほざく気か?」
雪南の為に時間を稼いでやりたいが30万近い兵の野宿はそろそろ限界を迎えている。
一気に朧を落とし、状況の打開を謀る必要がある。
「2万もあれば朧へ入れる自信がある。後は坊っちゃんが一気に城内へ入っちまえば、こちらの勝ちは決定だな。」
砦として建つ城落としを佐京は簡単に言いやがる。