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戦場に響く鈴の音
第31章 天使
「認めぬっ!」
鈴が険しい表情でそう叫ぶ。
「あのな、お前の許可とか求めてない。」
俺が言い返せば
パンッ
と顔の横から音がする。
「痛えな…。」
鈴に殴られた。
いや、平手打ちを喰らった。
クックと佐京が笑い、雪南が
「鈴っ!黒崎様に何をするっ!」
と叫び出す。
「認めぬと言ったのだ。鈴は認めぬと言った。」
俺を平手打ちしたのは鈴のくせに涙をボロボロと流して自分の想いだけをぶつけやがる。
「それでも、鈴は朧へ置いて行く。後の事は佐京に任せる。嫌なら天音へ戻り、寺嶋に燕まで送り届けて貰え。」
俺の決定を覆す気はない。
「鈴は要らぬというのか?鈴は邪魔だと申すのか?」
「ちげーよ。この先には鈴を連れていけないと言ったんだ。赤羽(あかばね)から来て良いのは俺と伴が一人と指定を受けた。」
磐(はん)の城下街に聳える赤羽城…。
由の大城主、奏 恵照(そう けいしょう)からの召喚状が朧へ来たのは俺達が朧を制圧した10日後の事だった。
この流れまでは雪南の予測範囲…。
大城主といえど下手に暁や朧奪還に兵が出せるほど由には力が残っていない。
暁を攻めれば背後の西元から兵が来る。
それは朧も同じ…。
まんまと笹川の婿に2つも城を取られた以上、大城主が出来る事は俺を窓口にして蘇と交渉するしか路がない。
その前触れとしての呼び出し…。
由の一番端である、ここから中央の磐まで馬を飛ばしても2週間は掛かる距離がある。
その間はと鈴に留守番を言い付けた瞬間、発狂する鈴からはこの仕打ちだとため息が出る。
「鈴は認めぬ…、そんな危険な所へ雪南と二人だけで行くだと?赤羽が伴を一人しか認められぬと言うならば神路の小姓である鈴を連れて行けっ!」
泣き喚く鈴には慣れた。