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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
意外だったのは、この状況であの佐京が真面目な表情で状況を考え込み出したという点だ。
「これで終わりだとか言わねえよな…。」
佐京が意味深に問う。
この程度では、俺達がやった事は夢物語だと言いたげな表情だ。
俺が考えた結末には程遠いと佐京は見てる。
戦国の時代を終わらせる。
その為の由遠征だと佐京を連れ出した。
佐京は自分を理解している。
佐京のような男が戦場へ出る意味を…。
それは憎悪や怨恨を生み出し、どれだけの時が経ったとしても戦は終わりを見せはしない。
俺が西元の鬼と呼ばれる限り、由が俺を許さないのと同じだ。
「まだ終わらない。だから俺は御館様と神国大祭に出席する。」
大河様には神の帝との繋ぎ役をして貰っていた。
雪南を天使にとの、こちらの願いも御館様がゴリ推しをして手に入れた切り札となる。
「神へ行くというのか?」
無言だった鈴が発言する。
その瞳が金色に光り、怒りを俺へ向ける。
「鈴…、その話は後だ。今は閣議で朧の城主を決めてしまう。」
「嫌じゃ…、神路が神へ行く話が先だ。」
「鈴っ!」
「また…、鈴を置いて行くつもりか?」
「そのつもりはない。だから、閣議が先だ。」
おいでと腕を広げれば、鈴が大人しく俺の腕の中へ入り込む。
その額に口付けをすると鈴は笑うが皆は俺と鈴から目を逸らす。
「閣議中ですぞ…。」
ドス黒いオーラを纏う雪南が低く冷たい声で言う。
「採決を…。」
誰も異議を唱えない。
「反対したところで既に決まってる話だろ。この閣議は事後承諾と変わらない。」
反対はしないが不満は残ると佐京が言う。
孩里だけが安堵をして肩の力を抜く。
結論は出た。
朧の引渡しを決定し、蘇の兵が朧を引き上げたのは閣議から3日後の事だった。