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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議



「その、まさかだ。」


雪南の代わりに俺が答えてやる。


「せっかく取った城を返すという意味ですかっ!?」


状況が飲み込めた茂吉が叫び出す。


「取った訳じゃない。預かっただけだ。笹川は孩里を当主として纏まる事が決定した。宙を攻めた无の軍は引いた。朧は孩里を城主として、その家臣に透里が付く。」


今の詳しい状況を出来るだけ説明してやる。


「それじゃ、また村から米が奪われる。笹川は俺達、民の事など考えないって兄ちゃんはわかってて城を返すと言うのか?」


我慢が出来なかった与一までもが騒ぎ出す。


「孩里はもう、民から搾取はせぬ。その為に暁を蘇に渡したのだ。笹川を領主として不満がある場合、民は暁が受け入れる。それが孩里を朧の城主とする条件だ。」


要するに、笹川が今までのような領地の治め方をすれば民は飢えに苦しむ前に蘇への亡命が可能となる。


「与一とその家族は既に亡命した扱いとなってる。これでお前との約束は果たしたぞ。」


家族は無事だとわかれば与一は納得をせざるを得ない。

納得をしないのは一人だけ…。


「今更、朧を手放せだと?」


无の盾に使われただけの佐京が怒りを見せる。


「佐京が気に入らぬのはわかる。だが、蘇にとってはこれが一番の最善策なのだ。」

「どこが最善策だよ。」

「先ず、无の侵攻に兵を割く必要が無い。」


无に対しては笹川が盾となる。


「次に暁がある。今後は羽多野をゆっくりとさせてやりたい。暁はいずれ佐京の物となる。城下街すら持たぬ朧よりも、花街を持つ暁の方が佐京には都合が良いはずだろ?」

「確かに花街がある方が良い。だが、あの親父は簡単には引退なんぞしねえよ。」

「ならば、今しばらく花街で遊んでろ。此度の遠征の功労者としての褒美は出す。」


どうせ、働くよりも遊んでる方が良いと佐京は考える漢だ。


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