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戦場に響く鈴の音
第36章 興奮
「下ろせ…、神路…、こんな所で変な事をするな。」
尖らせる唇に口付けをして黙らせる。
「かっ…、やぁ…。」
舌で鈴の小さな口の中を掻き回すだけで肩を震わせる鈴がいやいやと首を振る。
いつだって…。
俺の方が興奮させられる。
帝都だろうが往来だろうが関係ない。
どんな状況だろうが鈴が俺の腕の中に居るだけで、欲情が抑えきれずに興奮してしまう。
興奮する俺の肩を叩き
「こんな場所で…、何をしてるのですか?」
と冷たい声で制す奴が現れる。
「雪南っ!鈴達は雪南を探してたのだ。」
俺に抱っこされた鈴が雪南にジタバタと見苦しく手を伸ばして尻を撫で続ける俺から逃れようとする。
「私を探していた?」
眼を細める雪南が訝しむように俺を見る。
「探してた訳じゃない。雪南こそ…、こんな場所で何をしてるのかを見に来ただけだ。」
「私がですか?」
「そうだ。答えろ。」
俺は主だ。
主に隠し事をする家臣など信用が出来ない事くらい、雪南はよくわかっている。
「私は後継人として、私の保護下にある人間の様子を見に来ただけですよ。」
答えたくない事を答えざる得ないと雪南は嫌そうな表情のまま、淡々とした口調で言う。
「後継人?」
「ついて来て下さい。」
俺と鈴に頭だけで方向を示す雪南が往来を歩き出す。
スルりと鈴が俺の腕からすり抜けて、雪南の後ろについて行く。
簡単に俺を興奮させる女子は、あっさりと俺を萎えさせる。
嫌な腹立たしさだけを感じる。
雪南など放っておいて俺の方を見ろと鈴に命じるくらい簡単な事なのに、そんな子供地味た姿を見せる事すら腹が立つ。
「ほら、神路…、行こう。」
不意に鈴が振り返り、俺に向かって小さな手を伸ばす。
その手で俺の手を引いて嬉しそうに歩き出す鈴に何も言えずについて行くだけの漢でしかないのだと笑うしかなかった。