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戦場に響く鈴の音
第36章 興奮
職人街に雪南が立ち寄る理由に心当たりがあるとすれば、兄の斉我の為にと神国で人気のある菓子職人を尋ね歩くくらいしか思い浮かばない。
「どうする?」
不安そうな鈴が背伸びをして俺の顔を覗き込む。
「鈴は…、どうしたい?」
山脈越えで疲れてるのなら、無理に雪南を追わずとも宿でゆっくりさせてやりたいとも思う。
「神路は…、どうしたいのだ?」
鈴の小さな手が顔に触れる。
宿で茂吉や佐京が鈴にまとわりつくのは癪だと思う。
「少し…、雪南を探しながら…、街を見て回るか?」
鈴を抱き上げて聞けば
「街を見て歩くとか嫌いなくせに…。」
と頬擦りしながらクスクスと笑いやがる。
「天音でゴロゴロしてるだけの生活が好きなんだよ。」
「御館様になった神路は鈴の傍には居てくれない。」
「居るだろ?」
「鈴が小さな時は…、ゴロゴロしてるだけの神路だったのに…。」
今は違うと鈴が悲しげな瞳を伏せる。
その表情が嫌いだ。
何度も胡蝶に強いて来た表情…。
勝気で努力家の鈴には、そんな表情は相応しくない。
「鈴の為なら…、街を歩くくらいなんでもない。鈴の為なら…、今すぐに天音に引き上げてゴロゴロとしてる俺になる。」
お前の為ならなんでもしてやれる。
お前の為だけにここまで来たのだ。
お前にそんな表情をさせる為ではないと鈴を説得すれば
「なら…、仕事を済ませて天音に帰ったら…、鈴は神路だけの為に琴を鳴らそう。」
と可愛らしくはにかみやがる。
約束だと鈴を抱えたまま口付けを交わす。
頬を赤らめる鈴に変な欲情が湧き上がる。
「宿に行って床に入るか?」
「雪南はどうするつもり?」
雪南よりも鈴を抱きたいと鈴の尻を撫で上げる。