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戦場に響く鈴の音
第7章 士気
万里と俺のハッタリ勝負が続く。
「たかが3万の兵で、この俺からその場所を守りきれるのか?」
万里は余裕の笑みを絶やさない。
獅子の顔をする万里には大きな刀傷があり、今までに幾千もの戦を経験したのだと理解が出来る。
50万の兵士長の名は伊達じゃない。
その万里と張り合う度胸を備えてるのだと俺は自分の兵に見せつける必要がある。
「守る方が余裕だろ?そもそも兵法じゃ攻めるには守りの倍の兵が必要だと教えてる。」
数だけで勝てると言う古臭いオッサンの相手は面倒だと俺は万里を馬鹿にする。
「蘇のヒョロヒョロの馬と兵が相手じゃ、攻めるこちらに倍の力の必要がない。」
「なら、すぐにやってみろよ。」
「早るな、若造。そちらはどうせ援軍待ちだろ?」
「さあな…。」
ある程度の駆け引きで相手の状況の腹を探る。
「今しばらくは時間をやる。せいぜい頑張ってそこで踏ん張ってろ。」
万里は高らかに笑うと兵を引き上げる。
今しばらくは…。
やはり万里はすぐに、こちらを攻めるつもりがない。
攻めるには倍の兵が必要…。
俺が万里なら西元という砦を焼くのは定石。
問題はその後…。
兵を集めるには時期が悪いのは由も同じ…。
田植えの季節…。
なら、万里側の追加兵は田植えの後…。
50万兵士長ならば7~10万の兵で攻めて来る。
「神路殿…。」
直愛が情けない声を出して俺に寄り添う。
鈴は黙ったまま馬の前だけを見てる。
「飯でも食って、万里が来るまではのんびりと構えるしかないな。」
呑気に俺がそう言えば直愛や他の兵が大丈夫なのかと不安のオーラを醸し出す。