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ダブル不倫 〜騙し、騙され
第2章 プロローグ
「んん……。加古川《かこかわ》先生……、もう……異動されてから……」
 
 加古川先生というのは、加古川アカネ――半年前に異動してきた二十七歳の女性教師だ。
 
「ハイ、半年……んっ……ス、スーツ、シワになっちゃうわ」
 
 また、にちゃ、ちゅぱっ、という音、のあとガサガサと音が遠ざかる。
 
「…………今日は……?」
 
「昨夜、アレが始まっちゃって……。ごめんなさい……」
 
「いいよ。加古川先生が悪いんじゃないから……」
 
「二人のときは、アカネって呼んで……。山瀬先生、座って……」
 
 ギイッという音がして、チィと、小さな音が聞こえた。
 
「ああ、アカネっ……」
 
「……修一さん……んん……」
 
 ピチャピチャという小猫がミルクを啜るような小さな音の中に、んっんっ、という男の声が混ざる。
 
 ――お口……お口でヤッてるの?
 
 胃の底から何かが上がって来るような気がして、優子はレコーダーを止めた。
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