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親愛なるご主人さま
第9章 エージェントX

「いよいよです。それで、実は『納品』ではなく『引き取り』にしたいそうです。“S”さんは仕事が多忙のようですが、クリスマスの頃にはそちらのお屋敷に伺いたいとおっしゃっています。日程を詰めましょう」

「こちらも忙しくなりそうだ。クリスマスには毎年恒例の奴隷オークションもあるしなぁ。前後してS君が菜穂子を迎えに来るならそれなりに“おもてなし”も必要だろうし」

 奴隷オークションパーティはエージェントX社主催で年に3回行われるが、会場は持ち回りで、梶篠夫妻の屋敷で行われる次回は12月のクリスマスの頃だった。

「Kさん。“S”さん次第ですが、いっそのことオークションと同じ日に”引き取り”もやって、盛り上げるのもいいんじゃないですか?以前、オークションパーティの時に菜穂子をショーに出すというアイデアもありましたよね?」

「ああ、最初の菜穂子の手紙に書かせた『オナニーショー』だったな、フフフッ、来場の会員連中はサプライズ演出で喜ぶだろうけど、S君がOKするかな?」

「聞いてみましょう? 日程は12月24日の夜でよろしいでしょうか?」

「うん。調整よろしく頼むよ」

「承知しました。ではまたご連絡いたします」

「今の電話の内容、察しがつくだろ?玲子」

 圭吾は電話口の横にいた玲子に聞いた。

「細井さんからでしょ。いよいよね。いつ『引き取り』にいらっしゃるの“S”さん」

「クリスマスの頃だ。オークションパーティと一緒にやって盛り上げましょうと」

「それ、楽しみだわ。あとひと月、菜穂子は我慢できるかしらね?調教を続けてヌレヌレ極上の食べ頃にして、大勢のお客さんの見ている前で“S”さんに引き渡しましょう」

「なあ玲子、菜穂子がここから巣立っていくとなると・・少しさびしくならないか?」

「あら?意外だわ。そんなことおっしゃるなんて。あなたはそうなの?調教対象の奴隷に妙な感情を抱かないのが私たちの流儀だったはずよ」

「相変わらず、玲子女王様は冷静だな。調教の対象が誰であれクライアントの“モノ”として扱える。私は歳を取って、この仕事を長くやりすぎたかな、感情に左右されるようになってきたよ、フフフ」




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