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親愛なるご主人さま
第9章 エージェントX

圭吾が自嘲気味にそのように言う理由が何なのか、圭吾自身は判っていた。それは依頼主の“S”を羨ましいと思う感情を、菜穂子を調教してきたこの半年ぐらいから抱くようになったからだ。
毎年5、6人のマゾ調教を引き受ける調教師のルーチンワーク的仕事をそろそろ引退し、菜穂子のような可愛い性隷を1人囲って隠居生活するのも悪くない。更に正直に言えば、菜穂子ほどの虐め甲斐のある女はそう出会えないと思ったものだ。自分の主人に、あれほどまでに自虐的に忠誠を誓い慕う女がいただろうか。圭吾にとってマゾ調教は決して退屈な仕事ではなく、ワクワクとさせるが、しかし手塩に掛けて調教した奴隷は所詮他人のモノか、他人に買われてここから消えてゆくモノのだった。(なぜだろうこの乾いたような虚しさは・・・菜穂子に惚れたか・・バカな・・・)
数刻後、再び圭吾の部屋の電話が鳴った。細井に違いない。今度は玲子にも聞かせるため受話器を置いたままスピーカーに切り替えた。
「圭吾さん、日程ですが、クリスマスイブで“S”氏はOKだそうです」
「承知した。相変わらず仕事が早いな。菜穂子のショーの方は?」
「それについては、条件と言うか、“S”氏から要望をいただきまして・・・」
「なんだね?」
「オークションにも伺いしたいと・・」
「ん?見学は自由だが・・・・まさかっ!」
「薫さんをオークションに出すのなら、その競売に参戦したいと言っています。それがOKなら引き取る前に菜穂子をショーに出演させても良いと・・」
「えっ!?」
圭吾は驚くとともに「“S”にやられたな」感があった。
「へぇ!そうキタかぁ~って感じね!ウフフっ」
「玲子。案外嬉しそうだな?どう思う?」
「どうも、こうも、“S”さんは私たちのお客様だし、2人目の奴隷をオークションで買い漁る権利も資格もあるわ。菜穂子の手紙を読んで薫に狙いをつけたのね。したたかだわ」

