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親愛なるご主人さま
第10章 待ちわびた聖夜

「はじめまして・・・菜穂子と申します。お、お会いできて・・大変嬉しゅうございます」

 細井の属する組織のとても偉い方なのだろうということを菜穂子は瞬時に察して無難な言葉を選び挨拶した。声が震えてしまったのは緊張ではなく“X”という男から感じ取れるドス黒く得体のしれないサディズムな空気が、菜穂子の持つマゾ特有の五感に反応させたからであった。


(なんか・・・怖い、このひと・・)

「ほう。流石にカリスマご夫妻の調教作品だ。躾が行き届いているな」

「お褒めいただきありがとうございます」

 玲子が礼を言って頭を垂れた。菜穂子は顔を床に伏したまま震えている。

「既に“嫁入り先”は決まってるらしいね?オークションに掛ければ良い値がつくのに残念だな」

 “X”は服従の姿勢で床に伏せている菜穂子の身体を舐め回すように見て品定めした。

「本日『引き取り』に来るのです。“S”というこの娘のご主人様が」

「細井から聞いているよ。東京で引き渡す時も調教師のあなた達に会って手渡したいとか、色々と面倒かけること言ってきた奴だね」

「左様です、確かに手間がかかり、その節は御社にもご面倒をおかけしまして・・・ですが、ご配慮していただいたおかげで高額な契約で締結しました」

 圭吾が“X”に気を使って礼を述べた。

 X社にとっても菜穂子は儲かる契約品となった。通常のオークション用の奴隷調教より高額の契約金で身を預かり、しかも“引き取り”後には預かった時と同額の残りの契約金が振り込まれるのであった。

「金持ちの上客は大事にしないとなぁ、リピートも頂けるといいんだが・・それには、何と言っても今回引き渡すこの女の調教成果にご満足いただかないとな・・・フフフ」

 “X”はそう言うとグラスをテーブルに置き、傍らに土下座をしている菜穂子のメイド服の裾をいきなりパッと捲り上げた。

「あっ~!」


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