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親愛なるご主人さま
第11章 千客万来
 
 山頂に雪を乗せた信州の山々に夕陽が落ちる頃、常連客達の高級車が次々と梶篠夫妻の洋館屋敷へと続く山道を上がって来た。山道と言っても舗装されて道幅も広く大型乗用車でも楽に登れる道である。洋館の門をくぐると5m近いモミの木がクリスマスデコレーションで飾られ、イルミネーションが輝いていた。玄関前の車寄せにはタキシードを着た男やドレスの上に毛皮のコートを羽織ったマダム達で溢れていた。夫婦と思われる老齢のセレブなカップルがいたり、単独の男もいたが、オークションの常連達の中には自分の私設秘書(実際には秘書と言う名の性奴隷と思われる女)を従えている男もいた。中東や中国などアジアから来たような風貌の男もいたり、中にはベネチアンマスクを着けて顔の上半分をかくしている男や女も数人いた。おそらく政治家や高級官僚、芸能人などで、社会的に素顔を晒せない者たちも今夜の招待客にはいるはずだ。彼らはエージェントX社の配慮と完璧な秘密厳守管理によって素性は隠したままマゾ奴隷を買って所有する趣味を楽しめるのであった。
 政界や省庁、あるいは財界にも取り入る力はミスターXによるところが大きく、故にエージェントX社が際どい裏ビジネスを警察や検察の目から逃れて運営できる後ろ盾の力となっていた。

 来客の到着がピークを過ぎると、裏庭の駐車スペースには高級外車がずらりと並び、荘厳な風景になった。広い玄関ロビーでコートを預け、ウエルカムドリンクを片手に顔なじみの客どうしが談笑しながら地下のパーティー会場へと移動して行く。パーティーの内容を知らない者がこの様子を見たらセレブなクリスマスパーティーでも開かれるように見えたはずだ。

 開演が近づき6時半ごろになると来客数は70人を超えた。ミスターX、細井、圭吾、玲子も玄関ロビーで客ひとりひとりを迎え入れ、来場御礼の挨拶に忙しくなってきた。

 そんな最中、ある男がミスターXを見つけて近寄ってきた。白髪で前頭葉が禿げ上がり、鷲鼻で肌はシミだらけだが、目つきだけは鷹のように鋭い老人だった。

「久しいな!X!おぬしにここで会えるとは」

「おぉ?生きておったかぁ薩摩男根め!ハハハハッ」

「ピンピン生きとるわっ!やめんか!その昔の呼び名は。ヒヒヒヒッ」

 ミスターXと親し気な口調で再会を喜ぶ不気味な老人に周りの客たちの視線が一斉に集まった。
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