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親愛なるご主人さま
第11章 千客万来

 右京は前歯をむき出して不気味に笑いながらボディーガードで付き人の巨体の男と共にVIP席のソファーに着いた。付き人の大男が持つ分厚いアタッシュケースの中は億を超える札束に違いない。

「玲子さーん!」

 呼ばれた声に振り向くと玲子の先輩女王様達4人が着飾ったドレス姿で手を振っていた。

「奈々姐さん!」

「マリアさんにエリーさん、あ!慶子さんも!懐かしいわ。ようこそ、いらっしゃいませ」

「お元気?玲子女王様?ウフフっ」

 玲子が若し頃、SMクラブやバーで女王の仕事をしていた時の大先輩たちで、玲子に比べれば今や相当な年増で、女王様の仕事は引退したが、パトロンを捕まえ、それぞれが優雅な生活を送っているようだった。忍び寄る齢に肌の衰えや弛むウエストは化粧やドレスでも隠し切れていないが、熟女の色香に溢れ、4人が集えばマゾを惹きつける強烈なフェロモンが湧き立つようであった。

「相変わらず美しく妖艶マダムそのものだわー。お姉さま方皆さん!」

「なに言ってるの、私たちにお世辞言っても一銭にもならないわよ。見てよ、このババアの段腹に太い二の腕、アハハハ・・」

「それに比べ玲子ちゃんは今やカリスマ女王様だもんねー」

「もう、よしてくださいよ、それより今夜はパーティーを楽しむだけじゃなくて、オークション参戦でしょ?」

「ウフフ、あわよくばね。旦那達からも資金せしめたし、4人タッグで金持ちバイヤーと競って可愛いおもちゃを落としたいの」

「あからさまな共同購入はルールに触れるから、奈々さん上手くやってね」
玲子は傍目を気にして小声でリーダー格の奈々に言った。

「わかってるわ。玲子女王様にご迷惑は掛けないようにするよ」

「ヨロシク。じゃ、今夜は楽しんでくださいね」

 玲子が4人のマダムをロビーから地下のパーティー会場へ移動するのを見送っていると、ふいに奈々が3人から離れ足早に戻ってきた。

「どうしたの?お姐さん」

「さっき、ミスターXと話しているのを見かけたのだけど、玲子ちゃんと圭吾さんは、あの男と親しいの?」

 周囲を気にしながら奈々が小声で尋ねた。

「いいえ、個人的に特に親しいというわけでは・・・・でもエージェントX社からの依頼によるM調教の仕事が今や殆どだから、どうしても絡みはあるわ・・・何か心配?」
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