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親愛なるご主人さま
第12章 競売第一幕 真由美

 この様子をステージから離れた場で細井と玲子が見ていた。

「全然お声掛からずって?最初から波乱だな~こりゃ」

「細井さん出す順番の問題じゃなくて?今後はシステムも含め考え直す必要アリね。吉岡は気の毒だわ」

 細井の嘆くような呟きに隣にいた玲子が答えた。

「と、おっしゃいますと?」

「お客様は事前配布資料をご覧になって、純子や薫があとから出てくる事を分かってるでしょ?その上、お買い上げ制限はおひとり様1体よ。後から出てくる奴隷がお目当てなら、バツイチで質がやや劣る真由美が1番手なら、コールせずスルーするお客様は多くて当然かもしれない」

「なるほど。さすが玲子さんは鋭い。でも上玉が後から出てくる方がパーティとしては後半に向かって盛り上げっていきますけどね」

「ええ。それも確かに言えるわ。実商売を取るか、パーティーの演出と盛況を狙うか、難しいところね」

 真由美の800xというスタート価格は出品する調教師の方から事前に申し出て、主催者のエージュントXと取り交わす言わば契約保証金である。例えば競り上がって1000xで客が競り落としたとするとエージェントX社の取り分は70%の700。調教師が残りの300である。X社が得る700の中からから今夜のようなパーティー費用や施設維持費、その他にも奴隷の調教や養育に関わる金を負担する。

 問題はスタート価格のまま全くセリ上がらず売れなかった場合だ。この場合、担当調教師がスタート価格をペナルティとしてX社に支払わなくてはならなくなる。そしてさらにディスカウント販売が自動的にスタートするのである。これは調教師にとっても売られる奴隷にとっても屈辱的なセカンドステージで「試用値引きオークション」というものだった。

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