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親愛なるご主人さま
第14章 値引き品の末路
 
 藤崎の妻はまちがえなく箱を開けたであろう。
 しかし復讐攻撃に藤崎が堪えた様子はなく、ますます由美子への執着的なセクハラは激しさを増し続いた。新米の女教師には同僚や先輩の教諭に相談する相手もなく、悩んだ末、逃げるように辞職して故郷から離れた。

 自分の周りの環境を変えたい一心で東京に出て進学塾の講師をして生計を立てた。教育熱心な由美子は受験生の支持や成績向上の実績を得て進学塾からの給与報酬も新米教師時代より数段良くなり、使えるお小遣いも増えた。
 顔をプチ整形したのもこの頃で、藤崎の『由美子くんのその泣きボクロはセクシーでそそられるよ」という言葉が心に焼き付いた忌まわしい過去を切り捨てたくて、美容整形外科へ行ったものだ。
 
 このころ公務員の夫と出会い結婚したが、そのあとの顛末は前述のとおり、魔が差したように行ったホストクラブで吉岡潤一郎に出会い、心酔してしまったのが終わりのはじまりだった。



「整形で二重瞼にして美しくなったのはいいが、儂の大好きだった泣きボクロを取りよって、しかも偽名まで使って・・・・あとでたっぷりお仕置きだな。おい、若造の調教師さん!約束通り買うぞ。この女!」

「あざーす!」

「イヤっ、この人だけは絶対イヤっ、ジュン!売らないで。この男にだけは許して!」

 由美子はベッドの上で後ろ手に縛られた身体を激しく捩って抵抗した。
 
「往生際が悪いな。由美子先生。こんなお買い得品、買わない手はないわ。旦那と離婚されて、入れ込んだホストの調教師さんに売られ、そしてついに儂のモノになるんじゃ。さっきステージで『どうぞ私をお買い上げくださいませ』って泣きながら哀願した言葉は嘘かな?」

「ぅう・・それは・・でもイヤっ、イヤよ。誰があなたなんかに!」

 ピシーン!

「ヒィッ~」

 吉岡の乗馬鞭が由美子の背中を激しく打ち据えた。

 それでもなお由美子は掛けさせられたメガネを振り飛ばすほど激しく首を振り、後ろ手に縛られたまま体を捩り藤崎の手から少しでも逃れようとした。

「いやです!絶対に!」

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