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親愛なるご主人さま
第15章 アバヤの女

 会場が沈黙した数秒後、ターバンを頭に巻いたサウジの男がすっと手を上げた。

「エイト!」

「・・えっ!?」「何と?」

 圭吾と仁が同時に言い、客席からも驚く声が聞こえた。

「エイトサウザンツ エクス(8,000x)デス」

 念を押すように黒磯のコールの倍額をサウジアラビア人の男が落ち着いた声でコールした。

「ウオォ~」

 会場がどよめき、黒磯が信じられないという表情で口を開けて椅子にもたれ込んだ。

 圭吾が両手を使って指を8本立てて確認すると、ウジアラビアの石油相の息子、イブラハム・アドラーは静かに頷いた。

 「で、では、8,000で決します!」

 パン!!

 競りを決するハンマーが打たれた。

 通例ならここで『売約済』の焼きごて判が用意され、田沼が由美子を受領した時と同様に、競り落とした客への引き渡しセレモニーとなるが、純子の便意が我慢の限界を迎えていた。

 電動でゆっくり回転するお立ち台の上で純子は唇をきつく噛みしめ、美貌を苦悶に歪め懸命に堪えている。にじみ出る汗がスポットライトに照らされヌメヌメと光り、キュルキュルと腸内を締め付ける便意に堪えるたびにまろやかな双臀がブルブルと震え、我慢の尻振りショーで大いに観客を楽しませていた。


 「も、も、もうだめ・・・出てしまいます・・・おトイレへ・・行かせてください」

 せき止めているアナル栓が直腸を駆け下る汚泥の圧力で今にも飛び出しそうにヒクヒクと動いていた。

 「トイレね。用意してあるよ。フフフ」

 仁の指示で会場スタッフの男たちが透明なガラス製の盥(たらい)を運んできた。直径が1mほどある。お立ち台にビニールシートが敷かれ、匂いを消すための香炉が5つ置かれ大量の香も焚かれた。

 この様子に会場がざわついた。

 「ここでさせるのか?」

 「美人でも出すものは匂いますからね。酒と肴に舌鼓を打ってらっしゃる方もいるから、お香を焚くのは、まぁ最低限のご配慮でしょうね」
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