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親愛なるご主人さま
第15章 アバヤの女

ステージの袖で玲子と細井がその様子を見ていた。
「サウジアラビアは男尊女卑の一夫多妻制。女性は人前で肌や髪すら見せてはならない。イスラム法で定められているわ。あくまでも人前でね、夫や親の前ではそうとは限らない。それと男尊女卑と言っても実際には夫は複数の妻を平等に扱わなければならない。近年、意外にもサウジの男は自由がないのよ。多妻制だけど妻たち以外の女と不倫したらイスラム法では鞭打ち刑に処されるの」
「すごい!玲子さん良くご存じですね。でもアドラーは純子を8,000xもの高額で買った。それはなぜなんでしょう?」
「7人目の妻にするって言ってたけど、彼にとって8,000なんて私たちの8千円程度の感覚かもしれないわ」
「アドラーの家、いや城か・・・は、サッカーグランドが10個分ぐらいだって“ミスターX”が言ってましたよ」
「“X”は行ったことがあるの?」
「らしいでしょ」
「おそらく広い敷地内で純子を隠し、あの国の女性の人権が見直される社会情勢の中だからこそ妻じゃなくて自分の好きなように出来る牝奴隷が欲しかったのでしょう。でも純子は大事に扱われるわね。中途半端なS男に買われるより、桁違いの金持ちS男のアドラーに飼われる方が幸せでしょうね。牝奴隷として」
ステージでは苦悶して目も虚ろな純子が身を捩りながらつぶやき、その声がマイクに拾われスピーカーから客席に届いた。
「お・ね・がい・・・うんち・・・させてください・・・・」
「俺に言っても、もう叶えてやれないのさ」
仁は両手を広げお手上げで見放すポーズを示した。

