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親愛なるご主人さま
第16章 沙耶香の調べ

ルミと沙耶香はミニスカートのメイド服の膝をカクカクさせ震えていた。 

観客がピーピーと指笛で2人の羞恥心を煽る中、再びドラムロールが鳴り響き、シンバルがジャーンと鳴って止った。

数秒の静寂のあと・・・


「得票数59! 圧倒的多数で生贄は・・・・・・5番、沙耶香!」

玲子の発表に呼応し、観客の「おおぉ~」というどよめいた歓声と「よっしゃ!」「やっぱり5番か」という声があちらこちらから聞こえた。

沙耶香を除く4人は首輪を引かれ舞台を降ろされ、沙耶香がひとりスポットライトに照らされた。

艶やかな黒髪を眉の上に真っすぐ揃えて耳を出したショートボブの髪型が良く似合い、澄んだ黒い瞳と相まって清楚な雰囲気に溢れていた。パーティーの最中はウエイトレスとして客席を回る目立つ役回りではなく、会場の片隅でピアノを弾いていたが、その胸に5番の札が着けられているのを今夜の客達が見逃すわけがなかった。

59票ということは客の約80%が沙耶香を今夜のオークション奴隷に追加したくて投票したのだった。清楚で育ちの良いお嬢様の容姿が沙耶香にとっては災いした。

沙耶香は驚いて目を見開き、恐怖に怯えて舞台中央で固まったままだ。唇が震え、声も発せられなかった。

(なぜ、私がこんな目に合わなければならないの?・・・)
自分の運命を恨んだ。


この春、私立音大のピアノ科に入学し、幸せな学生生活を送るはずだったのに・・・
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