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親愛なるご主人さま
第1章 プロローグ(鍵箱)

 三つ指を床につき、二の腕を胸の前で閉めるようにして両乳房を隠しているが、それがかえって胸の谷間をくっきりと浮き立たせていた。ゆるくウェーブがある柔らかな髪が掛かる細い肩からくびれたウエストと腰までの丸いラインは、けぶるように美しく、両腕で体の前を恥ずかしげに隠すポーズが写真を見る者を魅了させた。
 
 3ページ目をめくるとポーズは一転して、後ろ向きの全裸の立ち姿で撮られており、倒錯感は更にアップした。ウエストが見事にくびれ、ハイヒールを履き、せりあがった白いヒップが実にまろやかで、まるでミルクを溶かした白桃のようだった。
 
 だが、見る者を更に驚かせ、引き込んでしまう理由は、美しいヒップの谷間に太い鎖が食い込んでいることだった。その鎖にも「012」の番号札が下がっていた。
 
 さらに4ページをめくると、今度は正面から撮った画像だった。腰には首輪の色と同じ赤い貞操帯ががっちりと食い込んでいた。そこには錠前が2つ付いていて、貞操帯が腰からは外せないことを示しており、両足はM字型に青筋が浮かぶほど内股を大きく開いている。性器を覆い隠している貞操帯の中心部分に鍵穴があり、鍵を使い、その位置に付いている直径2cmほどの小さな蓋を開ければ、「貞操帯を付けたまま排尿出来るのですよ」と構造と仕組みを丁寧に見せて、説明するために撮影者のカメラの前でM字開脚ポーズをしている様であった。

 期待を高めて次ページをめくる。

 
 だが、5ページ目には写真はもうなかった。その代りに本の中がくり抜かれた小窓があった。
 
 ゴムプレートがはめ込まれていて、3本の金色の鍵が留められていた。3本の鍵の持ち手の部分には「012-1」「012-2」「012-3」と小さく刻まれている。5センチ程の厚みは、本のページ数の厚みではなく、この3本の鍵を埋め込むための空洞であった。つまり、本と言うより写真ファイルと鍵箱である。鍵は写真に写っていた若い女の股間の貞操帯の錠前2つと、本の表紙を開ける鍵の合鍵であることが明白で、この女を支配、所有する者が持つべき「鍵箱」であった。


 一時代を経た現在。



 この「鍵箱」の本は信州の山奥、今では廃墟となった洋館の書棚に人知れずひっそりと置かれていた。




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