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親愛なるご主人さま
第16章 沙耶香の調べ

「それでは。落札した商品に受領サインを」

 細井が柔らかな毛先の太い筆を黒磯に渡し、玲子が首輪を引っ張り上げ、ご挨拶の土下座していた沙耶香を黒磯の前に立たせて腰を突き出させ、両足を広げさせた。

「動くなよ!」

テーブルの上には赤と黒の2つの小瓶が置いてあった。

 黒磯は、黒いインクが入った小瓶を選び、沙耶香のパイパンの丘に自分のイニシャルのK.Kを重ねて崩した洒落たアルファベット2文字のサインを巧みに書いた。

「ぁああ・・・・」

 インクの筆先がパイパンの上をなぞるように動くと沙耶香は甘い息を漏らした。
媚薬で炙られたような状態の身体は筆先で肌をなぞるだけで子宮の奥までジーンとなるほどの感度に磨き上げられていた。
 インクは「売約済み」のフェイク焼きごて刻印にも使われたのと同じ特殊インクの薬液で、数日間は色落ちしない。
 細井は黒磯がボディペイントなどの筆を使った責めも好みであることを事前にリサーチしていて、大小2本の筆と二色のインクを用意していた。

 黒磯はもう一本の細い筆を取り、今度は筆先を真っ赤なインクに浸した。

「お化粧してあげようね」

ベネチアンマスクの下で、だらしなく目尻を下げて舌なめずりしながら筆を握った。

「まずは可愛い唇からだな」

 沙耶香は薄いコスモス色の清楚で気品あるルージュを引いていたが、その上から媚薬入りの赤インクでリップグロスを引くように塗った。毒々しい程の赤く濡れた唇が出来あがり、それだけで淑やかな令嬢が娼婦に生まれ変わったようだった。

「唇を舐めてごらんなさい!」

 玲子が追い打ちを掛けるように命じた。

 抗えば鞭が尻に振り下ろされることを知っている沙耶香は、赤インクが塗られた唇を舌で舐めた。それだけで媚薬が口中に広がり、喉から胃に下ってカァ~と血が燃えるような感覚を覚え、数秒経つと体内からジワジワと淫靡なうずきが駆け巡ってきた。


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