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親愛なるご主人さま
第17章 転送電話
 
 圭吾同様に玲子も一瞬の期待が泡と消え、ひどくがっかりした。
 しかし沈んだ自分に喝を入れるが如くブーツのヒールで床をガツンと蹴って鞭の柄を握りしめ、次のオークションステージに気持ちを切り替えた。
 そして部屋の奥の片隅にある鉄格子の檻に近づき、中にいる競売品の様子を見た。

「ぁああ・・玲子女王様。お願いです。この檻に入れられたままでもいいですから、どうか玲子様のモノでいさせてください。僕を売らないでください」

 檻の中の全裸の佑太朗は玲子の足音に気付き鉄格子の中から見上げ、涙目で懇願した。既にオークション番号③と書かれた丸い札が首輪に下げられている。

「オマエ、この期に及んでまだそんなこと言ってるのか!それと『僕』はやめろと言っただろ!」

バシィーン!

 玲子は鞭で鉄格子の檻を思いっきり叩いた。未だに現れない“S”氏へのイラつきや不満を佑太朗に八つ当たりするが如く怒りに満ちた鞭先の音だった。

「ヒィー!」

 玲子の剣幕に怯えて惨めに叫びながらも佑太朗のペニスは天を突くように起立して硬くなっていた。檻に入れられる前から乳首、ペニス、アナルには玲子特製の催淫クリームが塗り込められ出来上がった状態だった。

 玲子とは異なり、細井はまだ気持ちが切り替えられず怪訝そうな表情を浮かべて考えていた。


(ウチの組織で今夜ボスに至急に電話で話すことがある奴って・・誰だろう?・・・)


 細井はエージェントX社の中でもミスターXの側近に近い存在で権限もある。つまり至急であってもX社内の要件なら細井を通じて“X”に相談や報告を上げることが通常で、それが筋なはずだ。


(何か俺の知らない所でボスが動いているのでは・・・?)


疑念が浮かび考え耽っていると突然ファンファーレが鳴り、ステージは再びスポットライトに照らされた。
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