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親愛なるご主人さま
第18章 美少年の買主
競り値が900を超えたあたりからオークションは熱を帯びてきた。
インドネシアのいかにもバイセクシャル風の男が「1,000x」をコールした。
この男と日本のマダム勢のセリ合いの様相だが、村瀬親子と奈々たち元女王様グループはまだ動かなかった。

1,100、1200、1,250・・・もみ合うようにオークションコールが続く。

「結構人気あるじゃないの。嬉しいんだろ?」

佑太朗の後ろに立つ玲子が耳元で囁いた。

「ぁああ・・は、はい・・」

コールされる度に佑太朗の身体に羞恥のときめきが走るのが玲子にも伝わってくる。

しばらくすると村瀬未希が立ち上がった。客席の注目が集まる中、未希は壇上で濡れ悶える佑太朗を冷酷に刺すような目線を送りながらコールした。


「1,400!」

「ひっ」

佑太朗は未希と目が合って思わず小さな悲鳴を発した。未希の切れ長で冷酷な目に射竦められ、佑太朗は猛獣に怯える小動物のようだった。

競りのコールは我まま娘がするが、実際金を払うのは親父の村瀬曹仁の方だ。しかし未希は父親の同伴者ではなくバイヤーの一人としてオークションの会員登録されており、娘と父親それぞれ1品づ買えば一人2品以上購入のオークション独占違反にはならない。曹仁は佑太朗を安めの値段で競り勝って未希におもちゃのように与え、この後に出品される薫は自分のモノとして落とそうという腹だった。だが曹仁も無尽蔵に金があるわけではない。難しい駆け引きだった。佑太朗をなんとか1500xぐらいで競り落とし、次の本命、薫に投じる金をできるだけ多く残しておきたいのだった。

親子で1品づつ買おうとする魂胆が周りの客にも薄々感じられていて、結果的に独占買いしようとするセレブ親子に対して声には出さずとも批判的な目を向ける客も少なくなかった。

客席がやや不穏で淀んだ雰囲気の中、満を持したように奈々がゆっくり椅子から立ち上がり手を挙げた。
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