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親愛なるご主人さま
第19章 慎一郎

 中央高速道の雪は小降りになった。

 慎一郎は愛車ジャガーEタイプの流線形ボディを双葉サービスエリアのパーキングに入れた。6時半に無理やり仕事を終わらせ、菜穂子を引き取る会場に向けて車を飛ばす算段だったが、こういう夜に限って東京は24年ぶりのホワイトクリスマスイブだった。にわか雪で都内の道路は渋滞になり、途中、K夫妻への土産や菜穂子に着せる服、それに花束などを買うためデパートや花屋に寄っていたら、高速道に乗れたのは7時半を回っていた。雪は小降りになってきたが八王子まで50キロ速度規制のノロノロ走行のうえ、腹も減ってきて慎一郎をイライラさせた。

「Sさんも”X社”の車で一緒にいくか?」

 エージェントX社の細井の申し出を断り、仕事を終えてから向かって、8時には着くつもりでいたが、到底その時間には間に合わない。遅刻だ。

 うーん、やっぱり会場のK夫妻の屋敷の電話番号をこっそり聞いておくべきだったかな・・・いや道中で電話したところで・・・菜穂子の引き取りには影響ないであろう。 慎一郎はそんなことを交通渋滞の車の中で考えていた。

 菜穂子は僕が迎えに来るのをじっと待っていることだろう。そうやって菜穂子を焦らすのも悪くない前戯のひとつかもしれない。ただ菜穂子はともかく、菜穂子の手紙に書かれていた薫という女・・・いや、ニューハーフの美女をオークションでゲットできないものかと淡い期待と欲があったが、オークション開始時間に間に合わなければ残念だが諦めるしかない・・・・

 もし薫を買えたら、菜穂子の目の前で薫を抱いて、嫉妬する菜穂子にお仕置きを据えたらどんな反応を菜穂子と薫が示すかな?・・・そんな妄想していると股間が熱く疼いてきて、速度規制でノロノロ運転させられるイライラが少しは緩和された。

 欲と焦りと、不安と期待を抱きながら慎一郎は愛車を走らせていた。

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