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親愛なるご主人さま
第20章 最終オークション

(次・・・やっと私の番だわ・・)

 北野薫は鎖で引かれる前に自ら顎を上にあげ、首輪についたフックに掛けやすいように首を差し出した。この屋敷に連れてこられた時から覚悟は決めていた。J先生の専属奴隷の地位を若いナースのマミに奪われ、捨てられ、調教し直されて、売られると分かっていた・・・

(どうせ私は中古品の奴隷・・・)

「いくぞ!」

「はい・・・よろしくお願いいたします」

 首輪のフックに鎖を掛けられ、担当調教師の仁紀之に引かれて控室からステージに向かった。

「やけに素直だな」

 仁は薫の身体に首輪と番号札以外には何も付けなかった。
 
 今夜の他のオークション奴隷のような演出的な装飾品や拘束する手錠や縄掛けもしなかった。栗色の髪はアップに纏められ、赤い犬の首輪が細く白いうなじに映え、エロチックな色香を高めた。ハイヒールは履かせず文字通り全裸を晒した。化粧も薄めでナチュラルだ。あまり手を加えず自然のまま晒すのが薫の美しさを一番引き立たせる演出だと仁は心得ていた。
 しかしアナルの奥には催淫クリームがたっぷりと仕込まれている。

「あ、あのう・・」

 薫が引かれて歩きながら躊躇いがちに口を開いた。

「なんだ、今さら。恥ずかしいのか?」

「いえ、あの・・菜穂子様は・・ご主人様とご一緒に、もうここから旅立たれたのですか?」

「他人の事より自分のことを考えろ」

「・・・・・・・」

 薫は口を噤んだ。出会ってからいつも菜穂子を想い続けていた。7月に初めて対面して絡み合わされ、K様と奥様にお仕置き調教された日のことや、最後に姿を見た初秋の頃のお屋敷の庭園で牝犬散歩しているとき、玲子奥様の命令で股間を開き、かつて自分のご主人様であったJ先生の施術で包皮を切り取られ剥き出しにされた女芯。左右のラビアを貫いたピアスリングのご様子。菜穂子のことが頭から離れなかった。考えてみれば牡として初めて欲しくなった女が菜穂子だったことに気が付いた。薫の身体にまだ残っている牡のホルモンが菜穂子を求めて活性化し、これが恋するということなのかな、と思った。
 だが菜穂子はもう既にここには居らずご主人様に引き取られ、幸せな奴隷生活をどこかでしているのかも知れない・・

 嫉妬は湧かなかったが、寂しかった。

(菜穂子様にもう一度会いたい・・・)

口に出せずも強く心の中で叫んだ。
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