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親愛なるご主人さま
第20章 最終オークション

 圭吾も司会でありながらコメントや説明を省いた。静寂の中で薫を乗せたお立ち台をゆっくりと回転するだけで十分であり、余計な演出は必要ない程の作品であると思っていた。
 薫自身も命令されるまでもなく、両手を首の後ろに組み、胸を張り、両足を開き、回転台の上で尻が客席側に向いたときは自分から上半身を前に倒し、双臀の谷間を開いてアナルの窪みを客の目に晒すのであった。例によって回転式お立ち台の上の奴隷をスポットライトが刺すように照らし、ビデオカメラがズームしてステージの左右にある大型モニターにアナルの奥の皺まで鮮やかに映した。
 やがてお立ち台が更に回り、薫が正面を向いたとき客席のざわめく声が一段と増した。睾丸がない。しかし桃色のペニスはテラテラと濡れそぼり天に向いてそそり立っていた。数か月前までの薫のペニスは小さく、通常時は皮を被るほどだったが、女性客からのオークション参加も促す目的でペニス増大手術が施されていたのだった。

 薫のボディを一口で言い表せば立派な男性器が付いたミロのビーナスと言ったところだ。

 仁は薫のアップに纏めた髪のピンを抜いた。するりと解けてシルクのように滑らかく柔らかな髪が波打つように揺れて両肩に流れ落ちた。
 髪型が変わっただけでまた印象が変わり、客席から再び「おおっ」という歓声が上がる。

「仁のヤツ、仕上げ過ぎじゃないかな?どう思います?」

客席側の壁にもたれて細井が玲子に問うた。

「確かにエロチズムの極致という感じで薫の身体は芸術の域ね。見事すぎちゃうと圧倒されて、かえって下卑な性欲をそそらないということはあり得るわ」

「ですよね~」

「特にキャリアの浅いサディストの輩にはね。でもここに集まった客はセレブ層でSMプレイを極めた連中が大半でしょ。薫をオブジェとして自分の部屋に飾っておく贅沢とか、自分の所有するマゾパートナーに薫を絡めてとか・・・・つまり薫を当て馬にして・・色々楽しむってのもアリなわけよ」

「なるほど」

「自分の奥さんを黒人の巨根男に犯させてマジックミラー越しに見て喜ぶ夫の話聞いたことあるでしょ?」

「ええ、あれは寝取られることに興奮する、マゾ目線で見るわけですよね?」



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