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親愛なるご主人さま
第20章 最終オークション

「1万や!! 1万エクスで買うた」
「え!?・・・・・・・・」
ステージ上の圭吾も仁も、会場の全員が言葉を失った。桁違いだ。密かに薫を狙っていた村瀬曹仁は鳩が豆鉄砲を食ったような表情で硬直していた。
「い・・いきなりですが・・・1万xが出ました。他にいらっしゃいませんか?」
圭吾が冷静さを繕い会場に問うた。
「・・・・・・・・・・・・」
会場は静まり返っている。
「なんや、もうしまいか、フフフっ」
右京のつぶやきには競るなら来いと言わんばかりの余裕の含みがあった。
「・・・いらっしゃいませんね?」
圭吾が念を押す。会場の静寂がざわつきに変わっていったが、右京の1万に対抗する手は上らない。村瀬未希が父親の腕にすがる様に取りついているが、曹仁は目を見開いたまま首をがっくりと垂れている。
「では、いらっしゃらないようですので、オークション番号4番、薫は1万xで落札決定いたしました。
パーン!
圭吾が持つ落札決定のハンマーが打ち下ろされた。
「ぅうぅあ・・・・」
「ぇえぇ・・・・・」
会場全体から例えようがないざわめきが響いた。
「ちっ、金の力が全てとは言え・・・・好かんジジィだ」
そんな非難の小声もちらほら聞こえた。
まだ今夜のオークションパーティがお開きとされる前に早くも席を立ち、白けた様子で帰り始める客さえもいた。

