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親愛なるご主人さま
第20章 最終オークション
  
  
  騒然とする中でミスター“X”が右京に近づき握手の手を差し伸べた。右京が不気味な笑顔で“X”の手を握り返す。


「まずは。ひとつ・・」

「フフ・・順調だな」

「もう一つの方・・・頼むぞぃ」

「共有だぞ・・爺さん」

 その二人の様子を玲子はVIP席から離れた壁際の席で視界にとらえた。二人の会話は遠くからでは聞こえなかったが、見て弾かれたように席を立ち、バーカンターの奥の扉に向かって走った。咄嗟、本能的に隠し部屋の中の菜穂子の身を案じたのだ。玲子の胸騒ぎが収まらない。第三幕の沙耶香のオークションが終わったころからずっと続いている胸騒ぎだ。


 駆け寄ってバーカウンターの奥の小さな隠し扉を開けた。部屋の中の大きなテレビモニターは、たった今落札された薫の全裸姿が映し出されている。しかしそのモニターの前にいるはずの菜穂子は・・・・・・・居なかった。


「菜穂子!」


小さな部屋に玲子の呼び声だけが響いた。扉を閉じてバーカウンターに戻り、スタッフのバーテンダー数人に菜穂子の行方を訊いた。

 「メイド服の娘ですか?ついさっきフラフラと出ていきましたが・・」

 「カウンターの客対応に忙しくて・・・気に留めてなかったです。申し訳ありません。玲子様」

(ぁあ、鍵を掛けておくべきだった・・・悔やんでも仕方ない・・・)

 


 玲子は血眼になって屋敷中を探しに回った。




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