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親愛なるご主人さま
第21章 宴のあと
 
 細井はステージに戻り、「本日のオークションはこれで全て終了でございます。ありがとうございました」とマイクで告げた。取って付けたような挨拶だった。
 次いで、「オークションプログラムはこれで終了ですが、パーティーの閉会までにはまだお時間がございます。お飲み物もまだご用意できますので、ごゆっくりご歓談をお楽しみください」と案内した。

 客たちの反応はまちまちだ。右京の爆買い的セリ落としにやられ、シラけた顔で帰り支度をはじめる外国人客がいたが、オークションよりもこのアフターパーティ時間を楽しみとしている客も結構いた。今夜のパーティーで知り合ったサディスト同士で自分の所有する奴隷の交換交渉をする者や、奴隷調教の指南を顔見知りのベテランのサディストに求める者、自分が連れてきたパートナーの服を脱がせて衆人環境の中で露出調教を始める者もいた。会場内は酒の酔いもあり賑やかなサロン的雰囲気で、あちらこちらでSM談議に事欠かず、一種のカオスな状態となったが、三々五々客が帰路に着き始めるまでにはまだ時間が早かった。

 そんな中、玲子は人熱れに込み合うパーティー会場を縫うように足早に歩いて菜穂子を確保すべく探し回った。

 (アフターパーティーのどさくさに紛れて“X”や右京にさらわれてしまうのではないか?私だけの杞憂に終わればよいけど・・・・)胸騒ぎが収まらない表情だ。

  一方、圭吾と仁は薫と共にステージの後ろに一旦下がっていた。全オークションが終わってから数十分程が経っていた。気が抜けたような時間帯だ。


 「あーっ!しまった。仁君、薫の引き渡し儀式と納品の要望とか、右京さんにまだ訊いてなかったんじゃないか?」

 圭吾が慌てて言った。

 「そうでした!あまりにあっけない落札で、ぼーっとしているうちに細井さんが閉会の挨拶しちゃうし・・・」


 「直ぐに行こう」


 圭吾はVIP席の鷹杉右京の元に駆け付け、仁がよろめく薫の首輪を引いて続いた。

 「鷹杉様、遅くなり大変失礼しました。落札おめでとうございます。ご購入誠にありがとうございました。薫をお連れしました」
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