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親愛なるご主人さま
第22章 朝のテレビニュース

夜が明けた。
信州の冬の朝は薪ストーブの火が部屋を暖めるまではベッドから出にくい。
梶篠圭吾は手を伸ばして出窓のカーテンを開けて外を見た。夜中にまた雪が降ったのであろう、屋敷の庭は真っ白で、遠く八ヶ岳の頂まで続くファンタジックな銀世界を眺めていると、昨夜の淫靡で倒錯的な宴は、まるで夢を見ていたのでは?と思うほどだ。
8時近くになって屋敷の召使いから声を掛けられ、圭吾と玲子はようやく朝食のテーブル席に着いた。
熱いコーヒーを飲むとやっと目が覚めてきた。
人里離れたこの屋敷にいる限り、外界との繋がりは殆どなく、隔離された「奴隷調教の館」の主である圭吾と玲子の夫婦には俗世間の情報など必要とせず、朝、朝刊を広げて読むこともなく、テレビも地震で揺れた後の非常時ぐらいしか電源を入れない。
だがこの日の朝に限って、召使いが見た後に消し忘れたのだろうか・・・ダイニングルームの隅にある小さな液晶TVが映ったままだった。
中部地方の今日の天気は雪が降ったりやんだりと告げた後、地方局版のニュースに変わった。興味関心なく電源オフにしようと伸ばした玲子の手が止まった・・・・
「・・・・続きまして、昨夜、中央高速道、双葉サービスエリア付近で起きた多重衝突事故の続報です。警察の発表によりますと、乗用車、トラックなど車6台が絡んだこの大事故で、1人が死亡、8人が重軽傷を負いました。亡くなったのは事故のきっかけを作った乗用車の運転手で、所持品から東京都港区の会社社長、香月慎一郎さん34歳と判明しました。・・・警察の現場検証によりますと現場付近にブレーキ跡が全くなく、香月さんの居眠り運転かと思われ・・・・・」
「あっ、あなたっ!! 」
「ん、どうした? 大きな声出して」

