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親愛なるご主人さま
第23章 旅立ち
 
 菜穂子を助手席に乗せた梶篠圭吾のパジェロは、屋敷を出て山道を下ってから国道18号に入った。国道の雪は除雪され車は空いて流れていたが、深く垂れこめる曇天が、車内の2人に重くのしかかるようだった。
 菜穂子は何も言葉を発せず、ただ真っ直ぐに前を見ていた。圭吾は落ち着きなくタバコを咥えてはもみ消し、ステアリングを握りながら菜穂子の横顔を何度も見た。
 昨春、この車に菜穂子を乗せ、東京のホテルから「調教の館」の自分の屋敷まで連れてきた時が思い出された。あの時の、捕獲され怯えて震える小動物のような目をしていた菜穂子と、今、まっすぐ前を見つめる菜穂子のどこか冷めたような横顔はまったく別人のようだ。

 変わったのはそれだけではない、ニットワンピースの胸の膨らみは増し、助手席でミニ丈のスカートで組んだ足からチラリと誘うように見える太腿がフェロモンを醸し出していた。屋敷で毎日見ていた鎖に繋がれた牝奴隷の姿より、今、隣に座って、服を着飾った大人の女に圭吾は心を揺さぶられ、欲しくなってくるのだった。

 圭吾が重い口を開いた。

 「見ていたぞ。屋敷で服を着るとき・・・リング・・外さなかったよな?」

 
 「!!・・・・・・・・・・」


 圭吾の問いに菜穂子は横顔のまま一瞬、眉を動かし、目の色を変えたように見えたが何も答えず黙っている。

 「行く当てはあるのか?・・・」

 「そうねぇ・・・・冬景色を見ながら温泉巡りでもしようかしら・・・飽きたら東京へ戻って職探しかなぁ・・」

 二つ目の圭吾の質問にはすぐに答えたが、どこか他人の事を言っているように圭吾には聞こえた。

 (何処へ行っても“S”君には会えんのだぞ)


 圭吾はそう言おうとしたが・・・悲しみを逆撫でるようで流石にためらった。


 車は軽井沢町に入った。雪の歩道の街の軒下、煌めくクリスマスツリーが飾ってある飲食店や、スノーボードを持った若い男女がはしゃぎながら歩いている姿が見える。菜穂子にとって8ヶ月ぶりに見る俗世間の風景だった。



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