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親愛なるご主人さま
第24章 野獣 対 女豹

「はぁ。お屋敷から外部にかけた電話と、外からかかってきた電話の会話内容は、全てカセットテープに自動録音されますので・・」
「そうなの。知らなかったわ!昨日の分がこれね!?」
「はい。おそらく昨日は・・かかってきたのが1件だけです」
「わかった。ちょっと借りるよ」
「ははっ」
「それから、今日、この屋敷には圭吾さん以外は誰も入れないで!君江さんにも言っておいてね!誰か訪ねて来たり、電話があっても留守にしていると言って!」
「は、はい。かしこまりました」
玲子はカセットテープを握って圭吾の執務室に駆け込んだ。SONYのラジカセに『着信』と書かれたカセットのA面突っ込み再生ボタンをした。
数秒のあと房之介の言ったとおり1件の着信のみ録音があった。
“12月24日。午後9時13分・・・”
着信の時刻を録音機の機械ボイスが告げ、続いて会話の録音が再生された。
「到着したのか!?」
―― 圭吾の声だ。玲子は早送りボタンを押さず、そのまま聞いた。
「え? あっ、いいぇ、えっとあの・・ミスターX様にお電話です。そちらにいらっしゃらないですか?」
―― 受け付けロビーのスタッフの男の声だ。
間違えない。あの時、祐太郎のオークションが始まる直前に掛かってきた電話。受付から転送され、慎一郎からの電話ではないかと一同が色めき立ったあの時だ。
「ん?いや、こっちにはいない。VIP席かバーカウンターの方だろう」
「すみません。失礼しました。転送し直します」
「うん・・・あっ、誰から電話だ?」
「『エージェントX社の者』で至急繋いでほしいと・・」
「ああ、そうか・・」
―― 圭吾の声はここで終わり。再び受付男がバーカウンターに外線着信を転送したところから録音の再生が続いた。

