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親愛なるご主人さま
第24章 野獣 対 女豹

 「もしもし、こちらは受付ですが、ミスターX様に会社から外線電話が入っています」

 「了解、変わります。“X”様、お電話でございます。こちらの受話器お使いください」
 
 ―― バーテンの声だ。


 「繋いでくれ、もしもし俺だ」
 
 ――間違えなく“X”の声だ。玲子はラジカセの音量を上げて耳を澄ました。


 「“X“さん?ケインです。ご報告の電話です」

 「ナニ?・・・おい、もう少しデカい声で話せないか。こっちの周りの音がやかましくてな」

 ――電話の会話の後ろから聞こえるバーカウンターの音、オークション会場の喧騒や歓声、玲子のステージ上での声や鞭の音まで録音されていて聞こえた。

 「ケインです。ご依頼の件ですよ」

 「ん?」

 「摘みましたよ。ジャガーEタイプ、ボディカラークリーム」

 「うん?」

 「香月慎一郎」

 「えっ・・」

 「即死です」
 
 「おお!そうか。間違えなく確認したのか?」

 「ヨーコと二人で高速の現場に近づいて見ました」

 「そうか」

 「あんなに上手くいくとは思いませんでした」

 「うん・・それで」

 「どう見ても居眠り運転の交通事故です。派手にクラッシュして車を5.6台巻き込みましたが・・」

 「おう。それじゃニュースや新聞にも載るな」

 「でしょうね。火がついて、まだ燃えてますよ」

 「やった痕跡は残すなよ」

 「燃えちまいますよ。焼死体の胃袋の中までサツは調べんでしょう」

 「よーし!」

 「頂いた情報のとおり、お人よしで、車をほめてやると喜んで、コーヒー好きで・・」

 「うん、うん」

 「ヨーコが作った例のアレが入った特製コーヒーを運転しながら飲んでくれたようで・・トラックのケツにドカッーン!っすよ」


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