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親愛なるご主人さま
第24章 野獣 対 女豹

ドン! という音とともに応接室のドアが開く。
「あらいらっしゃい。昨夜はどうも・・・」
「おや。玲子奥様、おひとりかい?菜穂子はどこだ!」
「いきなり、怖い顔して何ぁ~に?ホントに不愛想なひと・・」
玲子は怒りの炎を瞳の中に鎮めつつ煙草の煙を“X”に吹きかけて言った。
「もういないわ。見たわよニュース。細井さんが今朝ここへ来て、契約解除。奴隷解放ですって。アッハハハ」
「地下室か?あんたのことだ、監禁してるんだろ」
“X”は粉雪が付いたコートを脱ぎ捨て、部屋を出て地下室に向かおうとした。
「待ちなさい!ミスター“X”これを聞いてからでも遅くはないわ」
玲子はサイドボードの上のテープレコーダーの再生ボタンを押した。録音された会話が流れ始めた。
「もしもし、こちらは受付ですが、ミスターX様に会社から外線電話が入っております」
「繋いでくれ、もしもし俺だ」
「“X“さん?ケインです。ご報告の電話です・・・・」
録音を最後まで聞くまでもなく“X”の顔が青くなり、次いで鬼のように赤くなって、こめかみの血管がピクっと浮かんだ。
「ウフフ・・私ね。このテープもって警察へ行っ・・」
玲子が言い終える前に“X”は野獣のごとく駆け、テープレコーダを取り上げて床に叩きつけた。破片が飛び散り、飛び出したカセットテープを革靴の踵で踏み潰し粉々に破壊した。凄まじい力だ。
「むだよ。テープは何本もダビングしてあるわ」
玲子は顔色変えず優雅にソファで美脚を組み直した。
「なら、あんたの口を封じるまでさ」
“ブーン”
“X”の右手刀が振り下ろされる前に、玲子がソファからジャンプして身をかわし、テーブルの花瓶を“X“に投げつけた。

