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親愛なるご主人さま
第25章 川辺の雪

 雪に覆われているが肌が部分的に見えた。顔は雪水で濡れた髪が凍るように張り付き、よく見えない。仰向けに倒れているので膨らんでいる乳房が雪の合間から出ているのが見えた。


 (やっぱり女のひとだ・・・)

 女の人の裸を見るのは幼い時に母親や祖母と一緒に入浴したときだけだった。
 
 こんなところに、なんで裸で・・? 

 女の裸を見たいという性的興味が、少年の心に無いわけではなかったが・・

 

 「グルル・・・」

 ゴローがまた唸りはじめた。

 勇人は倒れている女にさらに近づこうとしたが、急に怖気づいた。

 数日前に観た刑事ドラマを思い出したからだ。倒れている死体の近くに犯人が潜んでいて、目撃者も殺されるストーリーだった。

 勇人は吠えるゴローを抱きかかえ、一目散に家に戻った。

「かあちゃん! たっ、大変だぁ!」

 勇人の母親の110番通報で新潟県警本部は、救急車の派遣と共に『雪の中で裸の女が倒れて動かないらしい』という通報情報から事件性もあると見て所轄の刑事も現場に急行させた。

 だが救急車の隊員は無駄骨に終わった。倒れていた女は既に死亡しており、代わりに県警本部刑事部の鑑識課員数名が現場に入った。


 所轄の刑事は若い矢島康夫という刑事だ。鑑識課員によって立ち入り禁止のテープが張られ、矢島と共に現場を観察するが、現場の状況には皆、面食らった。
 全裸で仰向けに倒れている女の周辺には服や靴はおろか持ち物ひとつすら落ちてなかったのだ。



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