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親愛なるご主人さま
第26章 悪夢の女医

 ドアが半開きになっている。矢島はビビりながらそっと中をのぞいた・・・・・

 ストレッチャーが見えた。その上に、県警の安置室からドライアイスパックされ運び込まれた例の女の裸体が仰向けに置かれ、その身体の位置の1点だけを上からスポットライトのような無影灯の光が差し白く浮かび上がらせていた。

 北条レイラの姿は・・・・・・・・・

 矢島は薄暗い解剖室の中で目を凝らして見回した。









 いた!

 ストレッチャーから少し離れたライトが照らさない位置に佇んでいた。やがてゆっくりとストレッチャーに近づき、無影灯の光の中にレイラの姿がぼーっとくぶるように浮かんだ。サージカルガウンではなく膝上の丈の白衣を纏っていた、胸の谷間が白衣から持ち上がるようにくっきり見えた。短いスカートを穿いているのだろうか、白衣の下から裾が出ておらず見えない。代わりに黒いストッキングに包まれた太い腿からきゅっと締まった足首までの見事な美脚が見えた。そして解剖室にそぐわない黒いハイヒールを履いていた。

 法医学者、北条レイラは死体をしばらくじっと見つめた後、ニヤリと笑って白衣の前を開いた。微笑みと目の輝きが尋常ではい。そして白衣の下に短いスカートすら穿いていなかった。黒いハーフカップブラ、パンティ、ガーターストッキンッグだけだった。
ドアの陰からのぞいて見ていた矢島はゴクリと唾を飲んだ。

 (あぁ・・3年前と変わっていない・・・)
 
 ラテン系の女性を思わせる彫りの深い目鼻立ちに鳶色の瞳。黒く艶やかな髪。身体全体から醸し出されるフェロモンは医療従事者とはかけ離れた甘く危険な香りに満ち、それは俗にいる普通の美女の魅力ではなく、妖艶さを超えたスピリチャルな域から男を誘い込むような魔性をかんじさせる女だ。
 レイラは長い髪をかき上げると、垂れ下がらないようにゴムで結んで纏め上げ、ストレッチャーの上の仰向けの死体に上半身を覆いかぶせるように乗り出した。死体を見る切れ長の目の奥を異常に輝かせながらブツブツと何やら呟いているが、離れた位置に隠れている矢島の耳には届かなかった。

 レイラは両手に嵌めた手術用のゴム手袋を脱ぎ捨て、素手で死体の乳房を包み込むように触った。その手は少しずつ死体の腹部へ伸びさらに下へ動いた。


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