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親愛なるご主人さま
第26章 悪夢の女医


 次に矢島は自分の両足とベッドの脚を結んでいる革紐を解いた。

 どうにか仰向けV字拘束を逃れ、ひとまずホッとしてそのままベッドに裸の身体を大の字にした。手錠と拳銃という「刑事の誇り」を奪われ、恥辱の道具に使われたことが、矢島の心に深いダメージを与えたていた。

 「くそぉ~、あの女ぁ~!」

 浴室に飛び込み罵りながらシャワーを浴び、汗と精液と淫臭まみれの身体を清めようと懸命に試みたが、湯が傷ついたペニスと広げられたアナルに妙に沁みて、乳首に当たるシャワーもジーンとして心地よくなってしまう。矢島はレイラへの怒りを抱きながらも、シャワーヘッドをアナルに向け、蛇口を強めに開いてしまう。ボディーソープで身体を洗うとヌルヌルして心地よく、いつの間にか視界が桃色の雲に覆われたようになり、泡まみれの指をアナルに這わせたくなる衝動にかられてしまうのだった。レイラの呪縛にまだ覆われているようだった。


 「ウオォー!」


 矢島は咆哮し、頭を浴室の壁にガンガン当てながらシャワーを冷水にして頭から浴びた。どうにか邪念を払い、服を着てホテルを出た。宿泊費は先にレイラが済ませたようだった。






 翌日ー。

 矢島は署に出たが、捜査会議に出ても、現場で張っていても心ここにあらずの腑抜けの状態になった。それはレイラへの愛しさや切なさからではない、怒りや憎しみの感情からでもない。言わば魔性の女に犯されて、淫夢に彷徨う中毒患者のような状態が続いていたのだ。

 ふと気付くとポケットの中にサファイアのネックレスがあった。

 「くそっ、こんなもの捨ててやる」

 一度はそう思って、浴びるほど酒も飲んだが、醒めると上着のポケットにそっと大切にしまってしまうのであった。

 そんな状態が続いたある日、捜査の張り込み現場で、ボーっとレイラのことを考えていたら、現行犯逮捕の機会を逃してしまった。

 「このォ、馬鹿ヤロー!!」

 一緒に張り込みしていた相棒のヤマさんこと山田健介刑事にこっぴどく殴られた。矢島のせいで容疑者が逃走しただけでは済まず、逃げた男を追った山田は犯人が投げつけた出刃包丁が腹に突き刺さり深い傷を負った。


 「やっしー、お前どうかしてるぞ、何か悩み抱え込んでいるなら全部俺に話せや」


 山田は病院に見舞いに来た矢島に優しく言った。


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