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親愛なるご主人さま
第27章 死体と寝る女

レイラがまだ中学生の時、家庭内の経済的な問題を端に発し、北条家は離散となった。一回り年下の幼い妹がひとりいた。貧困で荒んだ暴力的な親には寄り付かない妹がレイラにはいつもくっついて離れず慕っていた。毎晩可愛い妹を慰めながら抱いて眠ったあの遠い日々を思った。行き詰った父親は自殺し、母親は嫌がる妹を無理やり連れ出して失踪した。レイラは遠い親類に引き取られた。その後、母と妹の消息は知れない。冷たく荒んだ母などどうでもよかったが、愛しい妹のことは生き別れてから今まで忘れた日はなかった。その妹の名が美穂だった。
「美穂ちゃん・・・」
呟きながらレイラは0度近い室温に拘わらず、ブラジャーとストッキングを脱いだ。肌を桃色に紅潮させ、背中のうっすらと浮かんだ汗が無影灯に光った。楽し気に踊るような足取りで死体の下半身側に立位置を移して、美穂と名付けた女の死体の両膝を手で掴み、M字型に足を大きく広げた。
死後24時間経っても美穂のひざの関節は意外と柔らかく動いた。死体の秘所が無影灯に照らされ、余すことなく明け晒されている。
生きている女なら羞恥に悲鳴を上げて抵抗するだろう。
“死人は無抵抗にして裏切らず”
死体フェチ北条レイラの至福の境地に至る心意であった。
レイラは内視鏡の先端にジェルを塗り、美穂の肛門から挿入して直腸、大腸、小腸の内壁をファイバースコープで照らしながら慎重に探った。仕事は仕事としてきっちりと正確にやらねばならいない。鼻から入れて、胃袋や十二指腸を見た時と同じで、モニター画面には、もしも死に至らしめる薬品などが使われたら、必ず反応して荒れたようになっているはずだが、そんな痕は何ひとつ見つからず、精巧な人体模型の内臓を見るように綺麗だった。レイラは驚嘆のため息をついた。驚いたことに小腸、大腸、そして直腸にすら食べ物の未消化物がなく、直腸から肛門は、浣腸した後のように便の残りカスひとつなかった。

