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親愛なるご主人さま
第27章 死体と寝る女

つまりこの事実は、少なくとも死の8時間ほど前からこの女が食べ物を口に入れていないことになる。あるいは食べさせてもらえなかった環境に居たとも考えられるが・・・
個人的な推理は別として体内に未消化物が全く無かったことは検体報告書に書かねばならない。
「それにしても、こんなキレイな死体見たことないわ・・・」
レイラはひとり呟いた。
体内は内視鏡で調べたとおりであるが、体表面からも死体特有の臭いすらなく、むしろこの女の生前の体臭と、亜麻色の艶やかな髪とシャンプーの残り香が、死後の今も誘うようにわずかに漂ってレイラの鼻先をくすぐった。
柔らかな前髪に隠れた広い額から、すっきり通った鼻筋。唇は小さく膨らんで上品さと情感を併せ持っている。閉じた瞼の膨らみが二重瞼と大きな目を安易に想像できる。もしも目を開けたら吸い込まれそうなほど輝く瞳の美貌なのだろう。小顔で細い顎から続く首筋。“なで肩”から伸びた腕の線が華奢で可憐だった。それでいながらアンバランスと言えるほど豊かなで柔らかな乳房に思わず吸い付きたくなるほどで、細いウエストは強く抱くと壊れてしまいそうなか弱い風情の女らしさを醸し出しているが、反して腰の周りの肉は煽情的であった。男ならだれでも触手を伸ばしたくなるようなスベスベさと柔らかさがあったはずだが、生体ではない今はまるで白い陶器のようにひんやりと冷たかった。そのひんやり冷たい手触りとむっちりと脂がのった美肉のバランスがレイラを虜にした。
レイラは呟きにしては大きな声を発した。
「ぁあああああ・・・美穂・・もう食べてしまいたい・・」
手足の先端の凍傷以外、実に綺麗な遺体だった。
レイラは検体の最後の仕事、いや、最後のお楽しみ部分に取り掛かることにした。
ここに彼女の遺体が運び込まれて来て、最初に大雑把にチェックしたときから気になっていた部位だ。遺体の横の銀のトレーにはペリカンの口のような子宮診察器や肛門診察鏡などの金属製の医療機器が冷たく光を放って置かれている。しかしレイラは、真っ先にその医療機器は使わず、まずは自分の指先にジェルを垂らした。
「さぁ、お姉さまによ~くお見せなさい。ヒヒヒ・・」

