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親愛なるご主人さま
第28章 手紙

2人はズボンを雪解け水に汚しながら何か手掛かりになるモノが落ちてないか、全裸死体があった周辺を探し続けた。
しかし、それらしい遺留品の類はおろか髪の一本すら出てこない按配だ。
「陽が落ちるまでにあと1時間ほどしかないぞ。やっしー、掘る範囲を広げてみよう」
「はい」
矢島は上着を脱いでYシャツの袖をまくり上げ汗だくになって雪を掻いた。
すると・・・
“カチッン!”
矢島のスコップ先に何か硬い物が当たった。
「石か?いや・・・あ、これ、金の輪だ!ヤマさん出てきましたよ!」
「おっ、イヤリングなら耳に挟むバネがとネジがあるはずが・・・これは無いなぁ、ピアスってやつかぁ・・・左右の耳に付けるならもう一個落ちているはずだ・・・」
山田は白い手袋で摘み、フゥ~と息を掛けて付着した雪を落として、しげしげと見た。リングの直径は3センチ弱、太さは2ミリ程で恐らく純金だろう見た目以上に重みがあった。
(ずっと付けて下げていたら、耳たぶが伸びちまいそうだな・・・)
山田は漠然と思った。
このピアスリングから指紋が取れる可能性は低そうだが、保管用の透明ビニール袋に慎重に入れた。もし女の身元が確認できて家族が現れたら、貴重な遺品として渡せる可能性もある。
矢島は昨夜、北条レイラがピアスやイヤリングについて訊いてきたことを思い返した。
ピアスを耳たぶにしていたら外しても痕の孔があるはずで、最初に現場で見た鑑識員もそのぐらいはわかるはずだ。
(そうか!ピアスは左右の耳ではなくて、身体の他のどこかに孔が空いていることをレイラさんは自分で検体して分かっていて、そこを貫通していたピアスの存在を確認することに拘ったのだ。

