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親愛なるご主人さま
第28章 手紙

 (しかし、それが他殺か自殺かの判断の決め手に繋がることなのか?・・・)

 矢島は雪かきするスコップの手を止めて考え込んだ。


 「なぁ、やっしー、最近の若い奴らはピアスって良くするよな? マニアックなヤンキーつうのか?そんな連中は耳たぶだけじゃなくて、鼻や唇とかにも穴開けて、見た目は、なんか気持ち悪くて、かっこエエとは思わんよ。儂の息子や娘がやったら、絶対許さんわ」


 「鼻や口だけじゃないですよ。体の窪みや突起があれば・・臍に、乳首に、性器・・・・」

 (あ、そうか! 死んだ女には陰毛が無くて、ツルツルだった。サディステックなレイラさんの好みだ。だ、だから、昨夜、解剖するのは勿体ない、上玉だとか・・・)

 北条レイラは3年前、矢島をモルモットにして弄んだ、そして全裸で死んだ女はレイラ好みの身体で・・・ピアスリングが・・・恐らく剃毛していた女の性器に装着されていただろうと、孔を見つけていたのだ。つまり死んだ女は生前、誰かに身体を支配されていた・・・かつて矢島が一夜体験したようなモルモット的な性奴隷のような類・・・・そんな境遇の女なのか・・・

 ではなぜ・・・女は全裸になって自殺したのか、あるいは全裸で殺されたのか?殺されてから裸にされたのか?・・・・・・



 「おい、やっしー、考え込んでないで、手を動かせ!」

 「はっ、すいません・・・・ん?・・あっ!そこ、ヤマさん!ヤマさんの足下のそれ!」

 「ん?・・・・あっ、なんだこれ・・・封筒か?・・・」

 山田の足下の雪の中に白い封筒が見えた。うっかりしていると見逃しそうだった。

 「切手は貼ってねぇ、宛名も差出人も書いてないな、あ、開けてみよう、中に便箋が入っているぞ」

 「なにか書いてあれば・・・」
 
 「遺書ってこともか?・・・」

 どこにでもある一般的な定型の白い封筒だった、だが雪水で湿ってびしょびしょに濡れていて封の糊も剥がれ、封の口が半開きだ

 矢島は雪水の冷たさに悴む指で封の中から便箋を取り出し開いた。便箋は3枚あった。


 矢島の持つ便箋に山田も覗き込むように見た。


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