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強姦魔
第6章 飯島家

「弥生、今夜は飲み会だから、飯はいらないよ」

午前7時、高校で美術を教えている夫は出勤していった。

「朋子ちゃん、遅れるわよ」
「はーい、ママ、今、行きます」

午前7時10分、小学校2年生の娘、朋子がようやく起きてきた。

「あらあら、髪がくしゃくしゃじゃないの」
「ママ、お願い」
「もう、2年生でしょう。自分で出来なくてどうするの」
「だって…」
「しょうがないわね」

口ではこう言っているが、弥生は娘の髪を梳かすのが喜びだった。
24歳で結婚したが、中々子供が出来ず、心配していたところ、30歳で授かったのが朋子。「目の中に入れても痛くない」とはこのことかと思うほど、弥生と夫にとって、娘は宝物だった。

「ママ、いってきます!」

午前7時50分、その娘を小学校に送り出すと、弥生はほっと一息。コーヒーを淹れ、ゆっくり新聞と折り込み広告を読む。

今年、飯島(いいじま)弥生(やよい)は38歳になる。夫は大学美術部の先輩で2つ年上。
住まいはアトリエを備えた二階建て一軒家。日曜日にはそのアトリエで夫と一緒に絵を描く。

土地は、農家の次男である夫が実家の畑を分けて貰ったものだから、住宅ローンの返済負担はそれほど大きくない。

夫が今日のように飲みに行くのは月に一度か二度しかない。殆ど毎晩、家族そろって食卓を囲める。幸せな平穏な生活だと言って良かった。

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