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強姦魔
第11章 スナック「雪」
市内盛り場の一角、路地を入ったところにその店はある。
給料日目前、客足は遠く、午後11時を過ぎても誰一人として来る者はいなかった。
閉店は午前0時だが、店を開けていても、望み薄。山根(やまね)雪江(ゆきえ)はグラスを片づけ、店を閉める準備を始めていたが、その時、体の大きな男が入ってきた。
「あの、お客さん、もう看板何ですけど」
「ビール1本くらい、飲ませてくれよ」
男はカウンターに座ると、雪江の返事も聞かずにタバコに火をつける。
「はい、どうぞ」と灰皿を差し出すと、「悪いね」とそれを受け取った。
「こんなものしかないですけど」
取りあえず乾き物とおしぼりを用意し、ビールを1本開けて、男のグラスに注いだ。
「おお、すまんな」
「お仕事のお帰りですか?」
「まあ、そんなところだな」
「お疲れさまです」
低くどすの利いた声。髪は短く、グレイのジャケットを着こみ、黒縁のメガネを掛けているが、頬の小さな傷、仕事柄、ママの雪江は普通ではないことを感じ取っていた。
「中国?」
「日本人ですよ」
中国人のパトロンの影響もあり、雪江は店ではチャイナドレスを着ているが、純粋の日本人である。
「色っぽいなあ」
「ふふふ、お上手ですね」