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溺れるくらいに愛して
第1章 溺れるくらいに愛して
***
「お客様、やめて下さい!!」
店が騒がしい。女が叫んでいるのを、男性スタッフが止めている。
「何事ですか?」
「みーこってあんた?!」
「はい……っ……」
「このっ! 泥棒猫!! あんたのせいで優祐は、優祐は……!」
いつかこんな日が来る。そんな予感はしていた。今では週に三回は会っていたから。
「水原さん、ごめんね。君、今日で……」
「はい。分かってます。辞めますから。ありがとうございました。安心して下さい。もう彼には会いませんから」
スタッフと奥さんにそう言って、店を立ち去った。
「そういう問題じゃない!」
そんな金切り声が聞こえたけれで、知るか。勝った。ちょっとぽっちゃり、ノーメイクで染みのある顔。ちょっとお金持ちのお嬢様に生まれた。それだけで、あんないい人を旦那にできて、それだけで十分だろう。感謝しろ。
私のほうが努力しているのに。理不尽な社会。こんな世の中、もうどうでもういい。あたしはホームセンターで包丁を購入して、優祐さんを呼び出した。