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泥だらけのお姫様
第8章 泥だらけのお姫様


      *** 


 夜、私は黒一色のおとなしめのワンピースで将さんに会いに行く。将さんは、既に到着していた。

「美愛さん……ごめん、別れよう」

 普段、あまりしないスマホでの連絡。予想はついていた。予想はついていたけれど、いざ突き付けられる現実に涙が零れ落ちた。

「本当に……ごめんね、2人目が……できたんだ」

 声が遠くに聞こえる。あぁ、そうか。

「いつ……から? セックス……レスじゃなかったの?」

「ごめん……、美愛ちゃんのことは遊びとかじゃなくて、本気で好きだったし、今も好き」

「だったらっ!」

 将さんは私の頭を撫でる。

「ごめんね、でも……やっぱり、俺、奥さんのこと大切なんだ。この関係がバレて流産でもしたら俺……後悔してもしきれないと思うんだ……だから──んっ……」

 聞きたくない。聞きたくなくて、私は将さんの唇を塞いだ。

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